北海道支部アイノラのつどいvol.8 ご報告

去る4月13日奥井理ギャラリーにて、日本シベリウス協会北海道支部の<シベリウス生誕150年企画>の第二回目として開催いたしました「アイノラのつどいvol.8・シベリウス弦楽四重奏曲全曲演奏会vol.1」。
多くのお客様のご来場とあたたかいご声援をいただき、無事成功の内に終えることができました。
会場にお越し下さったお客様をはじめ、ご協力をいただきました全ての皆様に、この場を借りて改めて厚く御礼を申し上げます。
こちらに、演奏ならびに当日スタッフを務めた会員から寄せられた声と写真のご紹介をもちまして、演奏会のご報告をさせていただきます。
<日本シベリウス協会北海道支部アイノラのつどいvol.8
「シベリウス弦楽四重奏曲全曲演奏会vol.1」を終えて>
中川 恵美会員(チェロ奏者)
初めて白夜のフィンランドに降り立った時の衝撃を忘れることができない。
「森と湖の国」は確かにその通りだが、霞がかった平板な景観はどこかよそよそしい。
天国的とも評されるが、白々しくもあるような。その印象を引きずったせいなのか、思い入れに今一つの難がある。シベリウスの楽曲には、静謐でいて秘めたる情熱と、抑制の効いた高揚感を表現したいところだが、うまくできたであろうか。同じ北でも因縁の隣国では、対局ともいえるショスタコーヴィッチが活躍する。
その明確な意思を論理的に組み立てた表現に好意を抱くものとしては、天国への挑戦でもあった。アンコールで演奏したアンダンテ・フェスティーヴォが、天国への階段の踊り場程度に達していたことを祈っている。
「弦楽四重奏は演奏できるだけで幸せである」とは以前私の師が言っていた言葉で、今現在も私の演奏活動の柱となっている言葉である。今回それを演奏させて頂けるだけでも幸せであるのに、シリーズとしてシベリウス全曲に取り組めるのは、この上ない機会だった。言葉少ない語り口で物語を作るショスタコーヴィチと対照的に、多くの音で独特の北欧風景を描くシベリウス。厚い和声の中に情景が浮かんでくるよう、次回までのインターバルの課題としたい。最後に、ご多忙中にもかかわらず、演奏会の運営にご尽力くださった駒ヶ嶺理事をはじめとする北海道支部の皆様に深く感謝いたします。
鈴木 理恵会員(ヴィオラ奏者)
練習が始まったのは、まだ雪が降り積もる前のことでした。4人の予定を合わせると、リハーサルのために取れる時間は週1回の2時間半。多くない時間を有意義に使う方法を模索していたことが、つい昨日のことのように思い出されます。学生時代からシベリウスの作品に触れる機会が少なく遠い存在であったこと、私自身、弦楽四重奏の演奏会がとても久しぶりだったことで、しばらく大きな不安を抱えていましたが、リハーサルを重ね、メンバーの助言と自分の役割を再認識することで少しずつ不安は解消されていきました。待ちに待った雪解けとともに本番の日はやってきます。幸いにもたくさんのお客様にご来場いただくことができました。驚くほどの緊張をしているからなのか、あっという間に次々と曲が終わっていきます。個人的な反省点は多々ありますが、弦楽四重奏という発音方法が同じ楽器のアンサンブルで大切であると思ってきた「音色を合わせること」を少しでも実現できたことは、私にとって大きな一歩でした。また来年に向けて、少しずつ準備を始めたいと思います。

(左)中川恵美会員 (右)鈴木理恵会員

(左)1st Vl. 浜島泰子会員 (右)2nd Vl. 林ひかる会員
加藤 康子会員(スタッフとして)
雪がやっとなくなった札幌の奥井理ギャラリー。窓一面に広がる芽吹き前の枯れ色の林の前で、パステルカラーのドレスをまとったアイノラ弦楽四重奏団が彩り鮮やかな弦のハーモニーを聴かせてくれました。
1曲目の途中でお歳を召した男性が会場に突然入って来られました。受付横のパイプ椅子にドカッと腰を下ろし楽しげに聴いておられます。1曲目が終わったところで話しかけると、近所で行われていた歌のコンサートとお間違いなのが判明。「いやあ、いい曲だったねえ」名残惜しそうに出ていかれました。休憩後の最後の曲はイ短調の弦楽四重奏曲。青春時代の傑作のひとつと言われるだけあって、さまざまな色合いをもった美しい曲です。長かったモノトーンの冬が終わって春になのだなあ。シベリウスの弦楽四重奏に春の訪れを重ね合わせながら、幸せな午後のひとときを過ごさせていただきました。

今回の演奏をつとめたアイノラ弦楽四重奏団一同、終演後のほっとした笑顔。
来年4月の「シベリウス弦楽四重奏曲全曲演奏会vol.2」で、再び皆様をお待ちしております!
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